記憶

箱に本を詰めて持ち上げてみると、
存外に重い。いつもそう。
本というのはいつも思ったよりずっと重い。それくらい私たちはあれが紙の束であることをよく忘れるし、紙が元々木材であることも滅多に思い出さない。何気無く着てるコートだって、もうコートの季節で。南半球の羊の毛だってことや、いま腰掛けてるソファが死んだ動物の表皮だってこと、曽祖父母が合わせて8人もいること、部屋の壁が白である必要なんて無いし、読みかけの本を読み終えなくたって誰にも呵責されない。
私たちは色んなことを忘れながら生きている。

忘れ勝ちなことっていうのは大概、夢に似ていると思う。
記憶の表現力は案外、乏しいものなんだと。


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