無題

ここ一年近く、体力も根性も愛嬌も無い私は社会に似えない予感が実感に変わっていくことにずっと魘されている。悪夢に魘されてる方がまだマシだ。今まで甘やかされてきた、多分。 鏡を見れば緩く育てられましたって顔つきをしてる気がするし、実際異性に甘や…

煙草

煙草。去年の冬にキャスターを知ってから、赤マル、ピースのインフィニティ、キャビンレッド、ピースのリトルシガ―、って具合に遷移して今は赤マルとブラックストーンって煙草を吸っている。 私はいつも赤マルみたいなスタンダードな煙草と、ピースみたいに…

夢想

夢の内容に漠然とした既視感を抱く朝。夢の内容は覚えてないけれど、断片的な詳細は覚えている朝。夢の内容を恣にできた明晰夢を側む朝。夢の内容が切り替わる瞬間だけが印象として残った朝。

残滓

洗面器に栓をして蛇口を捻る。 水を溜めつつ、手紙をライターで燃やして燃え尽きる手前で水面に落とす。蛇口から流れ出る水道水の流れが、灰になったそれを粉砕して水を黒く染めていく。栓を抜いて流すと後悔と独占欲の残滓が洗面器に膠り付く。

電飾

静かな、とても静かな真夜中過ぎ。酩酊した天使が三日月に翼を引っ掛けてくるくる回転しながら廃墟の遊園地に墜落した。落下地点は丁度回転木馬のテントの上で、間抜けな天使は彗星のように幌のなかに頭から突っ込んでしまった。すると色とりどりの割れた電…

綺麗

口で言う事も文章に書く事も、簡単だよね。誰でも出来るし何でも書ける。「飢餓で苦しむ子供たちを救おう」という声、意見はきっと正しい。でもそれが簡単だったら既に実現してる。実現していない理由は綺麗事は実質的な損を招く事が多いから。その損が自分…

記憶

箱に本を詰めて持ち上げてみると、 存外に重い。いつもそう。 本というのはいつも思ったよりずっと重い。それくらい私たちはあれが紙の束であることをよく忘れるし、紙が元々木材であることも滅多に思い出さない。何気無く着てるコートだって、もうコートの…

肖像

女。 女、“娘”でも“彼女”でも“妻”でも“母”でもない、社会の“歯車”でもなく人間の“雌”でもない純粋で曖昧で浮薄な“女”について考えてみたり、みなかったり。